森に囲まれた白州蒸溜所を上から

白州12年は、
なぜ店から
消えたのか

↓

サントリー白州蒸溜所の歴史と、年数で選ぶ白州。動画「白州12年はなぜ店から消えたのか」(約12分)の内容を、文章と写真で読めるようにまとめました。

白州12年はなぜ店から消えたのか 動画サムネイル動画で見る
(YouTube・約12分)

2018年の6月ごろ、ひとつのウイスキーが店の棚から消えました。サントリーのシングルモルト「白州12年」です。

売れなかったからではありません。むしろ逆で、売れすぎて、中身が足りなくなったからでした。

でも、ウイスキーが足りないなら、もっと造ればいいのでは。そう思いますよね。

12年もののウイスキーは、そうはいきません。白州12年が消えた理由を、時間をさかのぼりながら解いていきます。そのまま、白州蒸溜所の歴史をたどる旅にもなります。

2018

休売のお知らせ

貯蔵庫の樽の棚

2018年5月、サントリーは「白州12年」と「響17年」の販売を休止すると発表しました。白州12年は6月ごろから、響17年は9月ごろから。再開の時期は未定とされました。

理由として報じられたのは、ウイスキーの人気が高まり、需要が想定を超えて伸びたこと。熟成した原酒が足りなくなったのです。

ここで大事なのが、「12年」という数字の意味です。白州12年には、12年以上寝かせた原酒しか使えません。

つまり、2018年に瓶に詰めるはずだった原酒は、遅くとも2006年までに蒸溜されていなければならない。答えは、12年前にあります。

2008

ハイボールの復活

店頭の角瓶とハイボールジョッキ

時計を少し戻します。2008年、サントリーは「角瓶」を使ってハイボールを広める、復活プロジェクトを始めました。

これが当たります。2008年の終わりに1万5千店ほどだった、ハイボールを出す店は、翌2009年には6万店まで増えたそうです。

ハイボールを出す店
2008年末
約1万5千店
2009年
6万店

ウイスキーを、炭酸で割って食事と一緒に飲む。この飲み方が広がって、日本のウイスキーの消費は、ここから長い回復に入ります。

でも、ここで火がついた需要に、12年ものの在庫はすぐには応えられません。2009年に瓶に詰められた白州12年は、遅くとも1997年までに造られた原酒だからです。

2007

どん底の時代

では、その少し前は、どんな時代だったのか。

日本のウイスキーの消費は、1983年をピークに、四半世紀にわたって下がり続けました。底を打ったのは2007年。量にして、ピークのおよそ5分の1です。

国内のウイスキー課税数量
1983年ピーク
38万1千kl
2007年底
7万5千kl
約5分の1

2018年に足りなくなった白州12年の原酒が造られたのは、ちょうどこのころ。ウイスキーがいちばん売れなかった時代です。

休売のときに報じられた理由も、需要が「想定を超えて」伸びた、というものでした。売れない時代に、12年後の大ブームを見込んで原酒を大量に造っておくのは、どの造り手にとっても難しい判断でした。

ウイスキーは、今日の判断が12年後、18年後の棚に並ぶ商売です。白州12年の休売は、そのことがいちばん分かりやすく表に出た出来事でした。

1994

シングルモルト白州の誕生

蒸溜所の建物を描いたレリーフ

さらに時間をさかのぼります。白州の名前がボトルに付いたのは1994年。山崎に次ぐ、サントリーで2つ目のシングルモルトウイスキーとして発売されました。これが白州12年の始まりです。

シングルモルトとは、ひとつの蒸溜所のモルト原酒だけで造ったウイスキーのこと。白州蒸溜所の名前を、そのまま背負ったウイスキーです。

1994年といえば、日本のウイスキー消費はピークからほぼ半分まで落ちていました。

ウイスキーにとっては、世界的にも冬の時代でした。

その冬に、白州はあえて、自分の名前で世に出たわけです。

1973

森の中の創業

甲斐駒ヶ岳

そして、いちばん最初へ。白州蒸溜所が開設されたのは1973年。山崎蒸溜所の建設が始まった1923年から、ちょうど50年後のことです。

場所は山梨県北杜市。南アルプスの甲斐駒ヶ岳のふもとで、標高はおよそ700メートル。敷地は約82万平方メートルと広く、その大部分が手つかずの森のまま残されています。サントリーはここを「森の蒸溜所」と呼んでいます。

標高
約700m
敷地
約82万㎡
軟水の硬度
30前後
蒸溜棟を増設
1977 / 1981

ここを選んだ理由のひとつが水です。南アルプスの花崗岩の層をくぐってきた、硬度30前後のやわらかい水。仕込みにはこの水を使います。

その後、1977年と1981年に蒸溜棟が増やされ、一時は世界でも最大級のモルトウイスキー蒸溜所と言われました。今、白州蒸溜所として動いているのは、1981年に建てられた東側の建物です。

1973年は、秋に第1次オイルショックが起きた年でもあります。高度経済成長が終わろうとしていたころ、サントリーは山の森の中に、2つ目の蒸溜所を建てていました。

蒸溜所の敷地の森の小道
新緑の中の蒸溜所の建物

1か所で、何種類も造る

ここで、白州の造りの話をします。

スコットランドでは、ブレンデッドウイスキーを造るときに、ほかの会社の蒸溜所と原酒を交換するのが当たり前です。ところが日本では、会社の垣根を越えて原酒をやりとりする習慣がほとんどありません。

だから日本の蒸溜所は、1か所でいろいろな性格の原酒を造り分けます。

スコットランド蒸溜所どうしで
原酒を交換
日本自社の中で
造り分け
銅の蒸溜釜
木桶の発酵槽

白州には、形の違う蒸溜釜が16基あります。首のまっすぐなものと、途中がふくらんだランタン型。加熱は直火です。

発酵には、ダグラスファーという木で作った木桶を18基使っています。そして、ピートを焚かない麦芽から、しっかり焚いた麦芽まで、スモーキーさの強さも使い分けています。

直火の蒸溜釜
8基 +8基
初溜釜 / 再溜釜
木桶の発酵槽
18基
ピートの強さ
0–40ppm

さらに2013年からはグレーンウイスキーも造り始め、2024年には麦芽を自分たちで作るフロアモルティングも動き出しました。

釜、桶、麦芽。この組み合わせで、ひとつの蒸溜所から何十種類もの原酒が生まれます。白州12年の「足りない」は、こうした原酒の中でも、12年以上寝かせたものが足りなかった、ということです。

2021

再発売。そして値段

展示された樽の鏡板

ここから、時計を今に戻します。

2021年3月30日、白州12年は約3年ぶりに、数量限定で再発売されました。このときの希望小売価格は、税別8,500円です。

ただ、話はそこで終わりません。2022年4月に1万円へ。2024年4月には1万5千円へと、5割上がりました。そして2026年4月にも、白州を含むウイスキーの価格がまた改定されています。

白州12年の希望小売価格 税別・700ml
  1. 2021年8,500円
  2. 2022年4月10,000円
  3. 2024年4月15,000円
  4. 2026年4月再び改定

サントリーは値上げの理由として、長い年月がかかる商品のために需要に応えきれていないこと、そして蒸溜釜や貯蔵庫の増設などの投資を挙げています。

2007年のどん底で決まった原酒の量が、20年近くたった今も、値段の形で響いているわけです。

年数で選ぶ白州

白州は、熟成年数で大きく3つ。年数表記の無い「白州」、「白州12年」、「白州18年」。そこに毎年の限定品が加わります。

棚に並んだ白州ノンエイジのボトル

白州(ノンエイジ)

43%/2012年発売/年数表記なし

まずは年数表記の無い「白州」。2012年に発売されました。

年数を決めずに、若い原酒から熟成した原酒まで組み合わせられるので、休売の心配が比較的小さい1本です。

若葉のような青々とした爽やかさに、後から軽いスモーキーさ。ハイボールにすると、この爽やかさがいちばんよく分かります。サントリーも、ミントの葉を添えた「森香るハイボール」をすすめています。

白州の試飲セット

白州12年

43%/1994年発売/2018年休売 → 2021年再発売

主役の白州12年。

公式の言葉を借りると、爽やかな新緑の香りと果実の香りに、甘く柔らかなスモーキーさ。ノンエイジに比べて、果実の甘さとコクがぐっと増えます。

再発売のときにラベルも変わり、手漉きの越前和紙が使われるようになりました。

まずはストレートかトワイスアップ、つまり同じ量の水で割って、香りを確かめてみてください。

貯蔵庫の樽の棚

白州18年

43%/2006年発売/ISC2006 金賞

白州18年は2006年の発売。同じ年に、国際的な品評会、インターナショナル・スピリッツ・チャレンジで金賞を受けています。

18年以上の熟成で、熟した果実の香りと、樽からくる甘く深い香りが加わります。スモーキーさは、ほのかに残る程度です。

ここまで来ると、もう普段飲みの値段ではありません。特別な日の1本です。

白州 Story of the Distillery 2025 EDITIONのボトル
写真は2025 EDITION

限定品 Story of the Distillery

43%/2026年5月発売/スモーキータイプの白州モルト × バーボン樽

最後は限定品。2024年から毎年出ている「Story of the Distillery」というシリーズで、2026年版が3作目です。

2026年版は、スモーキーなタイプの白州モルトを、バーボン樽で熟成させた原酒だけで造られています。蒸溜所の中で造り分けている原酒のひとつに、スポットを当てた1本です。

ラベルには、蒸溜所の中にあるバードサンクチュアリに来る野鳥が描かれています。

数量限定なので、見かけたら、という1本です。

まとめ

  1. 1973創業
  2. 1994白州発売
  3. 2007どん底
  4. 2008ハイボール
  5. 2018休売
  6. 2021再発売

白州12年が2018年に消えたのは、売れなかったからではなく、12年前のどん底の時代に、今の人気を見込めなかったから。ウイスキーは、時間を前借りできない飲み物です。

白州蒸溜所は1973年、南アルプスの森の中に生まれ、ひとつの蒸溜所でたくさんの種類の原酒を造り分けてきました。

最初の1本なら、ハイボールで爽やかさを楽しめるノンエイジ。白州らしさをじっくり味わうなら12年です。

この動画で紹介した3本の、
今の値段

希望小売価格は改定が続いていますが、お店での実際の値段は、それとはまた別に動きます。希望小売価格より高いことも、安いことも珍しくありません。楽天市場・Yahoo!ショッピングの出品を、送料込みの総額で比べています。

限定品「白州 Story of the Distillery 2026 EDITION」の値段も見る

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※文中の希望小売価格は、各時点のサントリーの発表によるものです(税別・700ml)。お店での実際の値段は異なります。

※お酒は20歳になってから。飲酒運転は絶対にやめましょう。

動画で見る

白州12年はなぜ店から消えたのか 動画サムネイルYouTubeで見る(約12分)
参考資料
写真のクレジット

写真は Wikimedia Commons のものです(白州(ノンエイジ)と Story of the Distillery のボトルの写真は運営者の撮影)。この動画で使った写真も同じです。